
作品賞
「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」
あの時代、我々の世代が青春を送った時代は、全共闘運動とベトナム戦争に明け暮れた〝70年安保〟の時代だった。大学はバリケードで封鎖され、勉強などできず、ついには学園内で平然と殺人が行なわれた〝狂った〟時代だった。
そんな時代を刻んだ映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」がついに出た。
( 西村雄一郎 )
監督賞
滝田洋二郎「おくりびと」
この春はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で「侍ジャパン」が日本の世界一連覇を決めてくれたのも凄かったが、その前に『おくりびと』が今年の米映画界最高の栄誉に輝いた全地球駆けめぐる生中継あの快挙こそ、忘れられない。熱狂させてくれた日はない。明るく、大きな大きな窓が日本列島ぜんたいに開かれたように思うほど。
( 瓜生 孝 )
主演男優賞
東山紀之「山桜」
藤沢周平の短編小説を映画化した「山桜」(篠原哲雄監督)で、不幸な結婚生活を送るヒロイン野江(田中麗奈)に「幸せでござろうな」と声をかけ、山桜の枝を手折って渡す若き武士・手塚弥一郎。一幅の絵のように印象的な東山紀之の登場シーンである。
( 渡部保子 )
主演女優賞
小池栄子「接吻」
たまたまテレビで見た猟奇犯罪者に一目惚れし、獄中結婚までしてしまう女主人公。恐ろしいほど一途な愛を貫き、衝撃的なクライマックスを迎えるという難役を、小池栄子は見事に演じた。
映画「模倣犯」「犬猫」「下妻物語」や数々のテレビドラマ、舞台で活躍、バラエティ番組では、快活な魅力をふりまいてきた彼女が女優としての潜在能力を遺憾なく発揮、見事に新境地を切り開いたのが、万田邦敏監督の映画「接吻」である。
( 平山 允 )
助演男優賞
岸部一徳「GSワンダーランド」
岸部一徳は日本で最も信頼されている役者の一人だと言える。棒読み一歩手前の淡々としたセリフ廻し。
その中に人間の心の機微が見え隠れし、微妙なニュアンスが常にひしひしと伝わって来る。
( 島 敏光 )
助演女優賞
坂井真紀「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」
「実録連合赤軍 あさま山荘への道程」には、赤軍派を演じる多くの若者が登場する。
そのなかでも、最も哀しく、最も凄絶なシーンは、化粧をしているという理由だけで、自分の拳で、自分の美しい顔を殴る女兵士のシーンである。軍隊の〝しごき〟や、学校の〝いじめ〟を想起させ、我々のなかに存在する遺伝子―こんな残酷な仕打ちをさせてしまう日本人の〝原罪〟までをも、映画は問い詰めて来る。
この遠山美枝子役を演じたのが、坂井真紀である。
( 西村雄一郎 )
新人賞/男優(南俊子賞)
リリー・フランキー「ぐるりのこと。」
リリー・フランキーさん。不惑をはるかに越えての新人賞受賞、ということになる。もともと映画俳優が本業ではないけれど、石井輝男監督の「盲獣VS一寸法師」や松岡錠司監督「歓喜の歌」、河崎実監督「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」、更には原作が自作ということで、いわば御祝儀出演となった「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」など、結構スクリーンにも数多く顔を出している。
( 平山 允 )
新人賞/女優(小森和子賞)
吉高由里子「蛇にピアス」
1988年、東京に生まれる。
「紀子の食卓」(’08年)でデビュー。第28年ヨコハマ映画祭で新人賞を受賞。
すでに実績はあるが、「蛇にピアス」でのリアリティーにあふれた演技に対し、改めて新人賞を贈呈することが決定した。
吉高由里子はこの映画で、舌にピアスを嵌め、全体に刺青をほどこし、身体改造にひた走るルイという女性に扮している。
( 島 敏光 )
審査員特別賞
藤田まこと「明日への遺言」
第二次世界大戦の戦犯として米軍の裁判に孤軍奮闘して渡り合い断頭台に消えた岡田資中将の実話を大岡昇平の原作を元にして映画化したのが「明日への遺言」。裁かれる立場の岡田に扮して堂々たる演技をみせるのが藤田まことである。
( 福田千秋 )
審査員特別賞
松田聖子「火垂るの墓」
昨年夏に公開された『火垂るの墓』(日向寺太郎監督)で、7年ぶりに日本映画に出演した松田聖子さん。
野坂昭如の直木賞受賞作の原作は、アニメとテレビドラマで日本中の人々の涙をしぼった、太平洋戦争の犠牲となった幼い兄と妹のあまりにつらく切なく悲しい物語だが、彼女が演じたのはこの兄妹を残して亡くなってしまう母親の役。
そこにはステージやテレビで見馴れている華やかな人気歌手・松田聖子とはまるで違う、女優・松田聖子がいた。
( 渡部保子 )
映画音楽アーティスト賞
久石譲「おくりびと」「崖の上のポニョ」
日本人のハートにすうっと入り込む旋律、それでいてあらゆるジャンルの響きが楽しめる音楽を生み出している。
久石譲とは、国立音楽大学作曲学科在学中に、音楽家として活動するために、彼が好きだったクインシー「久石」、ジョーンズ「譲」から付けたもの。その、ジョーンズを追いつけ追い越せの勢いだ。
( 国弘よう子 )
撮影監督賞(富士フィルム奨励賞)
小松原茂「恋するトマト」
撮影監督賞(富士フィルム奨励賞)受賞、おめでとうございます。
農家の過酷な現実に傷つき、未来をなくした中年の日本人男性が、フィリピンの豊かな自然の中で一人の女性と出会い、愛を育み再生する姿を描いた「恋するトマト」。挫折を味わい、進むべき道を見失ってしまった主人公が再び生きる道を見出していく。その姿は、“100年に一度の経済危機”と言われるこの時代、多くの人に勇気を与えた。
( 津島令子 )
特別功労賞(増淵健賞)
岡田裕 アルゴピクチャーズ
岡田裕(ゆたか)は、1938年東京生まれの、映画プロデューサーであり、アルゴ・ピクチャーズの社長である。また日本映画製作者協会や映像事業協会組合の理事であり、映画製作者に与えられる賞である藤本賞や日本映画テレビ・プロデューサー協会賞の受賞者でもある。
( 白井佳夫 )
特別功労賞(増淵健賞)
浦岡敬一
また一つ日本映画の灯が消えたとの思いを深く。浦岡さんは昨暮11月24日に生まれ故郷の静岡の病院で亡くなられた。享年78歳。前夜まで病床では今年さっそくの仕事と決まっていたシナリオに色鉛筆でカット割りをなされていたそうで。常に前向きで明るく元気に生きた浦岡さんの精神力には愛惜とどまるところを知らない。
( 瓜生 孝 )
特別敢闘賞
河崎実監督/福井政文プロデューサー
ミステリの世界には、「バカミス」というジャンルがある。奇妙なキャラクターが登場し、ストーリーやトリックも異常なものが多く、偏執的なものが愛されるという不思議な世界。鯨統一郎、霞流一、蘇部健一といった作家たちが有名で、熱狂的ファンも少なくない。
同じように、映画の世界にも、実は「おバカ映画」と称する、一種のカルト・ムービーが存在する。中には、箸にも棒にも掛からないようなダメ作品もあるが、常識を超えた別の次元でみると、なんとなく愛着が湧いてくるような作品もあって、これが「おバカ映画」の真骨頂ともいえる。
この分野で、いま大ブレーク中なのが、奇才、河崎実監督だ。
( 平山 允 )
国際活動賞(田山力哉賞)
柴田駿 フランス映画社
フランス映画社の社長としての柴田駿の日本映画界での仕事は、もちろんこの会社の副社長であった故川喜多和子とのコンビで、大島渚監督の映画のヨーロッパの映画祭での上映を実現させ、その海外上映を図り、大島にフランス資本の日本映画の秀作「愛のコリーダ」を作らせた功績がとても大きい。
( 白井佳夫 )
ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞)
久里千春
新しいテレビ塔を建設中の東京の下町、向島の生まれだが、芯から明るく都会的でコミカルな彼女の持味には“銀座っ子”と呼ぶ方がぴったりする感じ。
1991年公開の『釣りバカ日誌4』(栗山富夫監督)では、スーさん(三国連太郎)の妹で、好きになった娘と結婚したがる息子に大反対。間に入ったスーさんをさんざん困らせるがどこか憎めない母親役を好演。持味をいかしたタカピーぶりが実にハマっていた。
( 渡部保子 )
ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞)
桜井浩子
1946年東京生まれの桜井浩子は、TBS・円谷プロのテレビ特撮ドラマ「ウルトラマン」の科学特捜隊の紅一点フジ隊員役で、世の人気をさらった女優、というイメージが強い。しかしその前に、中学卒業と同時に東宝ニュー・タレント1期生として活躍した時代のことを、忘れてはならない。
( 白井佳夫 )
ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞)
筑波久子(ChakoVanleeuwen)
筑波久子は、慶應義塾女子高校時代に東宝ニューフェイスに合格するが家庭の反対で断念。慶應義塾大学法学部政治学科在学中、日活に第3期ニューフェイスとして入社。「復讐は誰がやる」「肉体の反抗」「燃える肉体」などでヴァンプ役として売り出し、日本映画製作者協会新人賞を受賞している。
( 白井佳夫 )
ダイヤモンド大賞
羽仁進
古い話だが1964年のベルリン国際映画祭会場で、筆者は羽仁さんの輝いた横顔を見た。当時の夫人だった左幸子さんが「にっぽん昆虫記」で女優賞を受賞した瞬間と、もう1本の日本のコンペ作品、羽仁さんの「彼女と彼」が国際カトリック映画事務局賞を受けたとき。Aクラスの国際映画祭で夫婦同時ダブル受賞は珍しいハプニングだった。
( 日野 康一 )
ダイヤモンド大賞
小沢昭一
麻布中在学中から作家、評論家の正岡容の弟子に。この頃から加藤武、フランキー堺、仲谷昇等と演劇部で活躍。早稲田を卒業後俳優座に入り、千田是也のもとで舞台出演。映画は54年にデヴュー、本格的な活躍は川島雄三監督と出会った日活で「愛のお荷物」「州崎パラダイス・赤信号」「キューポラのある街」等に出演。好演がひときわ光る「幕末太陽伝」は話題に。66年には今村昌平監督の「エロ事師たちより・人類学入門」でキネマ旬報主演男優賞を受賞。優れた個性派として数多くの作品に出演、日本映画を語る上でもっとも重要な俳優の一人であることは間違いない。
( 福田千秋 )