A PRIZE WINNER

ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞)

久里千春

 新しいテレビ塔を建設中の東京の下町、向島の生まれだが、芯から明るく都会的でコミカルな彼女の持味には“銀座っ子”と呼ぶ方がぴったりする感じ。
 1991年公開の『釣りバカ日誌4』(栗山富夫監督)では、スーさん(三国連太郎)の妹で、好きになった娘と結婚したがる息子に大反対。間に入ったスーさんをさんざん困らせるがどこか憎めない母親役を好演。持味をいかしたタカピーぶりが実にハマっていた。
 ハリのある明るい声も、芸能界への登竜門があの藤原歌劇団だったときけば納得する。高校卒業後、ほんのチョイ役で映画デビューはしたものの、本格的な出演は1962年から64年にかけてで、数本の日活映画に出演する。
 64年にピアニストの山崎唯と結婚してからは、夫と一緒の仕事がふえていく。代表的なものが一世を風靡したイタリア生まれの指人形劇『トッポ・ジージョ』で、夫の山崎が主人公のネズミのトッポ・ジージョの声を、妻の彼女が恋人ロージの声を担当した大人気のテレビ番組だった。私生活でもおしどり夫婦として有名だったが、この時代、ときどき食事を共にしたりして親しく付き合っていた私の目から見れば、かなり神経が細かい芸術家の旦那様をどこまでもたてて終始場をなごませていた彼女の賢夫人ぶりには、いつも感心させられていたのを思い出す。
 映画はその後、滝田洋二郎監督の2作品に出演しているだけ。90年には最愛の夫とも死別。最近は健康問題をテーマにした講演などで全国を回っているようだが、まだまだ映画やテレビドラマで大いに活躍してほしい貴重な存在だ。威勢のいい21世紀版のイジワル婆さんなんかやらせたら面白そう。
( 渡部保子 )