A PRIZE WINNER

ダイヤモンド大賞

羽仁進

 古い話だが1964年のベルリン国際映画祭会場で、筆者は羽仁さんの輝いた横顔を見た。当時の夫人だった左幸子さんが「にっぽん昆虫記」で女優賞を受賞した瞬間と、もう1本の日本のコンペ作品、羽仁さんの「彼女と彼」が国際カトリック映画事務局賞を受けたとき。Aクラスの国際映画祭で夫婦同時ダブル受賞は珍しいハプニングだった。
 記録映画と劇映画をクロスオーバーする映像作家である。1928(昭和3)年、歴史学者で参議院議員だった羽仁五郎、幼年教育に力を尽くした社会運動家の羽仁説子の息子として生まれた。岩波映画製作所の発起人に加わって産業文化教育映画の世界に飛び込み、助監督の経験なしに監督の道に進んだ。長編劇映画「教室と子供たち」や「不良少年」は記録映画の手法で人間生活を撮った。
 記録映画の世界によくある「やらせ」とは無縁な人である。誠実に被写体の「こころ」に迫る。劇映画では不可能と思われる題材に記録映画の手法で突き進み、人種年齢を問わず人間心理の内面を記録する。動物映画やTV作品では、愛情を込めて動物たちと接し、カメラを向けられた動物たちは生き生きとした表情をみせる。やさしい人柄は作品ににじみ出ている。
( 日野 康一 )