第18回日本映画批評家大賞 受賞結果発表

助演男優賞

岸部一徳「GSワンダーランド」

 岸部一徳は日本で最も信頼されている役者の一人だと言える。
棒読み一歩手前の淡々としたセリフ廻し。 その中に人間の心の機微が見え隠れし、微妙なニュアンスが常にひしひしと伝わって来る。
 1947年、京都生まれ、60年代後半にはザ・タイガーズのリーダー、ベーシストとして音楽シーンの第一線に君臨。グループ解散後は俳優に転向。着実にそのキャリアを築き、1990年に「死の棘」で日本アカデミー賞主演男優賞を獲得する。
 今世紀に入ってからもその活躍ぶりは目ざましく、昨年も「GSワンダーランド」の他、「相棒—劇場版」「次郎長三国志」「ハッピーフライト」等でも重要なパーツを担い、独特の存在感を示している。 本年に入っても「大阪ハムレット」での人間味にあふれるユーモラスな演技が注目を集めている。 そのどれもが称賛に値する素晴らしい出来映えである。
 かつてGS(グループサウンズ)のスターだった彼が、「GSワンダーランド」ではレコード会社のいじけた社長を楽しげにひょうひょうと演じ、観客の目を釘付けにする。古き良き、GSナンバー「小さなスナック」を口ずさむというオチャメなおまけまである。
 自分自身の人生をバランスよく演技に投影し、様々な役がらに説得力を与え、控え目でありながらも安定感にあふれる演技を提供し続けている。
 今や岸部一徳は日本映画界のかけがえのない財産となった。
( 島 敏光 )