A PRIZE WINNER

主演男優賞

東山紀之「山桜」

 藤沢周平の短編小説を映画化した「山桜」(篠原哲雄監督)で、不幸な結婚生活を送るヒロイン野江(田中麗奈)に「幸せでござろうな」と声をかけ、山桜の枝を手折って渡す若き武士・手塚弥一郎。一幅の絵のように印象的な東山紀之の登場シーンである。野江はかって弥一郎から妻にと望まれたことがあったのだが、野江の方からその縁談を断ってしまっていた。
 海坂藩はその年も飢饉が続き、農民たちの生活は困窮をきわめている。そんな中で私腹を肥やし続ける藩の重役の悪行を見逃すことが出来なかった弥一郎は、ただ一人でその重役を斬る。静謐なたたずまいの中に風格がにじむ立ち振る舞いと、流れるような太刀さばきの殺陣の美しさで、正義感と誠実さにあふれる弥一郎像を見事に描き上げているが、本当に素晴らしい。
 ジャニーズ事務所にスカウトされたのは小学6年生の時で、1982年15歳で錦織一清と植草克秀の三人で『少年隊』を結成。先輩アイドルのバックダンサーとして活動を始めるが、踊りの上手さはこの時代から目立っていた。85年シングル『仮面舞踏会』で本格的にデビュー。以後の活躍は歌番組、ドラマ、ミュージカル、映画と多彩をきわめる。
 現在はテレビ朝日系の『必殺仕事人2009』に主演中で、中村主水の後輩同心・渡辺小五郎に扮し、藤田まことのあとを継ぐ二代目の“ムコ殿”として野際陽子扮する義母に毎週いびられているが、裏稼業の仕事人としては悪人共を冴えわたる殺人剣で斬り倒す胸のすく大活躍ぶり。端正な正統派の二枚目として、これからも日本映画が誇る文化である時代劇の旗手として頑張ってもらいたいものだ。
( 渡部 保子 )